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皆さん、こんにちは!
歯科医院地域一番実践会の井ノ上です。
歯科医院を買収する際に、歯科医院を医療法人ごと引継ぐのか、個人の歯科医院を引継ぐのかによって、違いがあるのはご存知でしょうか。
今回、医療法人ごと引継ぐ場合と、通常の個人の歯科医院を引継ぐ場合とで、どのような違いがあるのかご紹介いたします。
医療法人ごと引継ぐ場合は、出資持分の譲渡、医療法人の役員や社員などの交代などの方法により引継ぐことになります。
主なデメリットは以下の3点になります。
そもそも医療法人とは、医療法の規定により特別に認められる法人になります。会社法の規定により特別に認められる株式会社などとは異なる仕組みになっているのをご存知でしょうか。
歯科医院の経営が軌道に乗り、業績が上がってくると、顧問税理士などから歯科医院の医療法人化を勧められることがあります。そこで、よくわからず「他の医院も法人化しているし、そういうものなのか」と、よく考えずに医療法人化を行ってしまう歯科医師も多いかと思います。ですが、法人化を行うということは、法的に考えると大転換になります。しっかりと、メリットとデメリットを 理解した上で慎重に判断すべきです。
医療法人化のメリットデメリット・タイミング
医療法人化のおもなメリットは以下の4点です。
1)院長個人と歯科医院が法的に分離されることで、家計と経営が切り離されます。それにより、事業資金の集積や経営の合理化を進めやすくなり、対外的信用が増加し、経営の永続性が付与されます。
2)全体として税負担が軽減できる場合があります。
3)分院の開設が可能になります。
4)歯科医院の引継ぎに関して、診療所を廃止するなどせずに引継げます。
一方で、デメリットは以下の3点です。
1)社員総会および理事会の開催、事業 都道府県知事への届出、ならびに役員登記が求められるなど、各種手続きが必要になります。
2)社員総会決議などにより、経営権がはく奪されるリスクが生じます。
3)社会保険に強制加入になるとともに、場合により税負担が増大します。 医療法人化のタイミングですが、分院を開設するのであれば、「売上が1億円」を超え、かつ「社員総会や理事会など法律に則った運営を継続できる 組織的基盤」が整ってから検討すればよいと考えています。なぜなら、十分な売上があり組織的基盤も整っている状態でなければ、医療法人化のコストを負担しきることが困難であるためです。
医療法人化している歯科医院は多数ありますが、 社員総会の開催など法律に則った運営が現実にはなされていないケースの方が多いかもしれません。法律に則った運営を怠れば、後々に足元をすくわれる事態に繋がります。
歯科医院を医療法人ごと引継ぐ場合の手続き
医療法人には、持分の定めのある医療法人と、持分の定めのない医療法人があります。
持分の定のある医療法人の場合は、売手側から買手側に出資持分を売買契約により譲渡し、それとともに、社員や役員などについて、買手側の指定するものへの交代の手続きをとることが一般的です。 持分の定めのない医療法人の場合は、社員や役員などについて、買手側の指定する者への交代の手続きをとることで引継ぎを行うことになります。この場合、売手側は当該医療法人から役員退職金などの支払いを受けることで、医療法人の引継ぎの対価とすることが通常です。
いずれにしても、医療法人自体は変わらないので、医療法人と従業員などなどとの契約は従来通り継続され、個人の歯科医院を引き継ぐ場合に必要な歯科医院の廃止開設手続きも不要です。
医療法人ごと引継ぐ場合の注意点とは
医療法人ごと引継ぐ場合は、個人の歯科医院を引き継ぐ場合とは異なり、その医療法人に帳簿に記載のない負債があった際に、その医療法人を介し買手側がその債務の支払義務などをそのまま負うことになります。患者へのインプラント10年保証や医療事故に基づく賠償問題なども、そのまま引継ぐことになるので注意が必要です。
医療法人ごと引継ぐ場合は、十分な事前の情報開示を受けることが必須になりますし、引継ぐ際に作成する契約書においても、負債が引継ぎ後に明らかになった場合に備えた補償条項などを入れておく必要があります。
医療法人の場合の引継ぎ方法
医療法人の引継ぎにおいては、上記の医療法人ごと引継ぐケースのほか、 以下の2点があります。
・資産や契約関係などを個別に引継ぐ事業譲渡の方法により、個人の歯科医院を引継ぐのと同様の手法で引継ぐケース
・ (買手も医療法人である場合)医療法人の合併により引継ぐケース
今回、歯科医院を医療法人ごと引継ぐ場合と、通常の個人の歯科医院を引継ぐ場合とで、どのような違いがあるのかご説明しました。
M&Aコンサルティングに関して、詳しくは以下をご覧ください。