Z世代の活躍を促す人事評価制度の導入

労務・人事評価・採用

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初めに

Z世代(1990年代後半から2010年代に生まれた世代)が社会に広がり、歯科医院のスタッフとして活躍する時代となっています。日々コンサルティングの現場でマネジメントに携わっていますと人事評価制度の重要性が日に日に増していると感じます。

それは今のZ世代は多様な価値観の中で育ってきており、いわゆる「当たり前」という価値観が崩れてきている世代だと言えるからです。

例えば、今までは「5分前には仕事ができるような状態に整えておきましょう」と言えば大体は「そうだよね」と納得出来たことも、今では「5分前から準備するということはそれも仕事の時間に含まれるのではないか?」という疑問が発生したりします。

他のケースでも「医療人なのだから髪の色は派手な色はだめでしょ」ということ1つとっても、それは「当たり前ではない」ということが起きてきています。

このように多様な価値観を持っている世代が社会人として増えていく中で医院としての価値観やスタッフの皆さんの仕事観を統一していくためにもマネジメントのやり方を変えていくことは必須だと考えております。

特に人事評価制度は先生の医院の大切にしたい考え方や、モデルとなるスタッフ像を明文化したものだと私は考えております。

Z世代のスタッフに有効な人事評価制度について、定性評価と定量評価のポイント、給与との関連性、そしてZ世代の特徴を踏まえた注意点について説明していきたいと思います。

定性評価:360度評価の活用

Z世代はSNSなどの影響から周りからのフィードバックを重視する傾向があります。周りの評価を気にするあまり問題行動を起こすような人も出てくるほどその影響は大きいです。

その周りからのフィードバックを上手に活用する手段として360度評価を活用するケースが増えてきています。これは今のZ世代の特徴を捉えた有効な制度だと考えています。

現場で感じることとしては、「社会人なんだからこれぐらいやらなきゃだめでしょ」という発言のベースとなるような社会人基礎力(経済産業省)といったことに関しても、社会に出る前に他者からきちんとした指摘や学びを得られていないスタッフが非常に多いです。

社会人基礎力
https://www.meti.go.jp/policy/kisoryoku/

結果としてプライベートとの違いを認識出来ずに、意図せず問題となってしまうケースも職場内で多発しています。
そのようなことは先輩としても指摘しづらく、結果的に問題となるまで放置してしまい気付いた時には手遅れということも良く起きます。

そのような場合に、医院として大切にしている大切な行動を360度評価の項目として設定して、それを他者から評価されることで客観的に理解するきっかけとすることが出来ます。

しかし、導入の際に気をつけるべきポイントが多数あり決して簡単ではございません。
・医院で大切な行動を評価にいれる意味づけをしっかりと行うこと
・好き嫌いだけで評価を決めないように評価基準やそれぞれの項目に対する具体的な行動を説明する場を設けること
・お互いに忖度しあってしまう状況を作らないために一斉に行うこと
・評価に責任を持つために記名性で行うこと
・評価結果は院長先生や評価に関わる人だけが見れるようにすること
・評価結果をより良くなるための改善につながるためのフィードバック面談を実施すること

これらを気をつけて医院の状況にあわせて導入していけると良いと思います。特に、なぜこの行動が医院にとって重要なのかということをしっかりと説明していくことがポイントです。

様々な問題で価値観がずれてしまいやすい時代だからこそ、医院で大切にしてほしい行動を明文化し、360度評価として皆で行動をチェックしていく仕組みを作っておくことは重要だと私は思います。

定量評価

定量評価を制度として設定しておくことは、今のZ世代にはとても大切な観点だと思います。これも「当たり前」の基準がずれやすいためです。

歯科医師であれば1日何人の患者様を担当すれば良いのか?
歯科助手の役割はどこまでやるべきなのか?(受付だけ?アシストだけ?)
歯科衛生士のメンテナンスの時間は何分が良いのか?

ただでさえ医院毎によって驚くほど基準が異なっていることに加えて、個人の価値観も多様化しているため、大きなずれが出やすくなっています。

ちなみに、歯科医院では自分の医院のアポの時間が別の歯科医院のアポの時間と異なっていると、「おかしい」という方がいます。
それはマクドナルドとモスバーガーでハンバーガーの作り方が違うことに文句を言っているのと私は同じだと考えています。

マクドナルトで働いていて、以前の勤務先のモスバーガーではこうだったのでおかしいというスタッフがいたらどうでしょうか?かなりおかしなことを言っていると気付けると思います。

少し話がそれましたが、歯科医院でそのような話が良く出るのは、医院毎に基準をしっかりと説明出来ていないということなのかもしれません。

医院の基準を誰が見ても明らかな定量観点で評価制度として明確にし共有をしていくことは非常に重要だと思います。

給与との関連性

昨今の物価高に伴う賃上げの流れを踏まえますと、評価が給与とどのように繋がっていくのかを整理しておくことはとても重要です。

まず大前提として他の業界と歯科業界の違いをしっかりと説明していくことが重要です。

今の賃上げの流れとセットになっているのは、業務効率化(生産性)による収益性をあげていくという視点です。

AI化や機械化などによって収益性を改善している業種は多数存在しています。例えば、スーパーのレジ業務などは今は機械に取って変わられています。ファミレスの配膳もロボットに取って変わられています。これで売上が落ちなければ人件費を削減出来ていることになります。

工場で商品を大量生産出来たり、人口が増えている海外へ輸出出来たりする企業は生産性がどんどんアップしていきます。

他にもウーバーなどを活用することによって、今まではお店だけでしか販売出来なかったのがお客様を増やせるようになっている業態もあります。

このように生産性を高めていくことが出来るところはお給料があがっていく可能性は高いです。しかし、一方でAI化出来る、機械化出来る領域が増えるということはその仕事が必要なくなってしまうリスクをはらんでいるということです。

工場が海外に移転したり、工場が人ではなく機械を活用したりすると、仕事はなくなってしまいます。

一方歯科医院は人の力が非常に重要です。
AI化や機械化は思うようには進んでいません。それは人の力量が非常に重要ということでもあります。そのような仕事はなくなる不安は他の仕事に比べると少ないかもしれません。

しかし、その分人の力の限界が必ずくるため業務効率を高めることは難しいです。
例えば45分の診療を30分に縮めることが出来たとしても、短くするにも限界が必ずきます。勤務時間やユニットの限界もあります。そうすると人数によって対応出来る患者数は限られてきてしまいます。

そのように考えると歯科医院では仕事がなくなる心配は少ないが、そもそも賃金をあげにくいという特徴がある業界といえます。それを他の業界の良い点だけを見てしまっているスタッフさんもいらっしゃいます。

歯科医院においては、1人あたりの力量の差が非常に大きく出ます。
そのためスタッフの定着率や成長の観点がとても重要なのです。
また良い治療である自費治療を患者様に選択していただくということもとても重要なのです。

活躍してくれるスタッフにしっかりとお給料をアップしていくことが出来る制度を構築することは、とても重要です。
一度優秀な人材を失うとそのような人材を育てるまでにはかなりの時間と労力がかかってきます。

その「活躍している」ということすら判断基準がずれますので、先に説明しました定性面、定量面で評価制度を構築し活躍出来るスタッフを増やしていくことがこれからの時代においては欠かせないポイントとなってきていると思います。

院長の理念と評価基準の一貫性

最後に院長の理念やビジョンが評価基準と一貫性があるるかという点はとても重要になっていると思います。

それは「なぜ自分がその医院で働くのか?」ということがとても重要な時代になってきていると考えるからです。
これはSDGsという考え方が浸透していることにも表れていると思います。
SDGs
https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/about/index.html

物質的な豊かさから精神的な豊かさを求める人が増えてきていると思います。単純に車をステータスとしてほしいという価値観ではなく、車は1つの楽しむための手段として捉えてカーシェアといった形で所有をしないという選択をする人が増えています。

「何のためにやるのか?」「なぜそれをやるのか?」という観点がとても重要になっているのではないでしょうか。仕事なんだから頑張って当たり前ではなく、しっかりと先生や医院の考え方を伝えていくことが求められていると考えています。

まとめ

Z世代の方は多様な価値観を持っている世代だと言えます。
しかし、自身の考え方を発信したりすることや、共感を生み出す力、効率性を高める工夫などは得意だと感じることもございます。

マネジメントは強みを活かして弱みを打ち消すことが大事だと考えていますが、まさに人事評価制度ではZ世代の方の多様な価値観をまとめあげ、彼らの強みを引き出していく制度を考えていくことが大事なのではないでしょうか。

今回のブログが先生の医院の飛躍につながっていくことを心から願っています!

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